【山口でむち打ちに強い弁護士】 むち打ちで後遺障害を勝ち取る3つのポイント

1. はじめに:むち打ちで後遺障害認定を受けることの重要性

交通事故によるむち打ち損傷は、後遺症が残ってしまうケースも少なくありません。目に見える外傷が少ないことから、症状が理解されにくく、適切な補償を受けられない可能性もあります。

以下では、むち打ち損傷で後遺障害等級認定を受けるためのポイントを詳しく解説します。

2. むち打ち後遺障害の基礎知識

後遺障害等級とは

まず、後遺障害等級とは、交通事故によるケガの症状が将来にわたって残ると判断された場合に、その障害の程度に応じて等級が認定される制度です。この後遺障害等級認定を受けることで、賠償金額の大きい後遺障害慰謝料や逸失利益を受け取ることが可能になりますので、適切な最大額の賠償金を受け取るためには後遺障害等級認定を獲得することが重要となります。

むち打ちとは

むち打ちとは、交通事故などによって首が急激に前後左右に振られることで、首周りの筋肉や靭帯、神経などが損傷する怪我です。

追突事故では、運転者の体はシートに押さえつけられて前に飛び出しますが、頭部は重いためにその場にとどまろうとします(慣性の法則)。このため、首が鞭のようにしなり、激しく後ろに反り返った後(過伸展)、前に折れ曲がる動き(過屈曲)が生じます。この動きにより首周りの筋肉や靭帯、神経などが損傷することがあり、これがむち打ちによる症状になります。

むち打ちとは受傷のされ方の呼称であり、正式な医学用語では「(外傷性)頸椎捻挫」「外傷性頸部症候群」などと呼ばれます。

むち打ちには症状からの分類として以下のようなものに分かれます

◆頸椎捻挫型 

多くのむち打ちが当てはまります。頚部周囲の運動制限、運動痛が主な症状です。

◆神経根型 

頚部の痛みや上肢の知覚異常が主な症状です。椎間板ヘルニアにより線維輪が破綻し髄核組織が突出し神経根を圧迫することで症状が起こります。圧迫された左側又は右側の神経根の支配領域に従って該当する部位に知覚異常(しびれ)や放散痛(頚部に受傷し手足などの離れた場所に現れる痛み)が出現します。

◆脊髄症型 

頚部や上肢よりも下肢の症状の出現が主な症状です。破綻した線維輪から突出した髄核が頸椎神経根ではなく脊髄そのものを圧迫するため、主に脊髄の外側を通る下肢を支配する神経を圧迫し、両側下肢に症状が出現します。そのため、歩行に影響が出たり、膀胱直腸障害が出ることもあります。

◆バレリュー症候群型 

頚部痛と頭痛が発生し、めまい、耳鳴、視覚障害、かすれ声(嗄声)、易疲労感などの症状や悪心(吐き気)、血圧低下などの自律神経症状が出現します。

◆胸郭出口症候群型(TOS Thoracic Outlet Syndrome) 

胸郭出口は、首と胸の間に位置する通路で、ここを多くの神経(腕神経叢)や血管が通過します。具体的には、脳から伸びる神経が頸椎から肋骨と鎖骨の間を通り、脇の下を経由して腕に向かいます。この通路で神経や血管が圧迫されると、TOSの症状が現れ、神経の圧迫により、首や肩、腕に痛みが生じることがあり、腕や手にしびれやチクチク感が生じることや腕が腫れたり、重だるさを感じたりすることがありますあります。腕神経叢部のTinel徴候(腕神経叢部の特定のポイントを軽く叩打し、叩打した部位に一致する神経の知覚領域にチクチク感や蟻走感が生じる場合、Tinel徴候は陽性と判断されます)が重要な指標となります。

 解決事例 事例2 非該当通知を受けた胸郭出口症候群(TOS)のご依頼者様→14級9号獲得

むち打ちの症状

むち打ち症状としての頚部・腰部の疼痛、頭痛、しびれ、めまい、耳鳴や難聴などの症状は、数か月以上続くものもあります。

これら慢性症状は、後遺障害に該当するものです。治療により完全に治ることが一番良いのですが、このような症状が残った場合には、後遺障害等級を獲得する必要があります。

そのために、治療経過や症状の一貫性、客観的画像や各種検査結果などの他覚的所見をもとに、その慢性症状の存在を証明する準備を順次進め、症状固定後の後遺障害等級認定に繋げていきます。

◆頚部痛・腰痛

むち打ち症状で最も多く発生する症状です。

MRI撮影により脊髄や神経根への圧迫の有無を確認、理学療法や投薬により痛みを抑える治療を行います。この経過において、痛みが続く場合には、主治医にしっかりと痛みの部位や程度を伝え(SOAPのうちのS、Subjective(主観的情報))、症状の一貫性、連続性を明確に記録してもらうようにします。

また、神経ブロック治療(ブロック注射は、痛みを感じる部位の神経付近に麻酔薬を注射し、痛みを軽減する治療法です。)では、硬膜外ブロック、神経根ブロック、星状神経節ブロック、肩甲上神経ブロック注射が有用とされています。薬物療法や理学・物理療法の効用がない場合に行われるのが一般的な方法です。

◆頭痛

むち打ち損傷後に頭痛、特に後頭部の頭痛がよく引き起こされます。過労によるストレスや睡眠不足などの心理的な要因も影響すると考えられています。

頚部痛・腰痛と同様に、MRI撮影により脊髄や神経根への圧迫の有無を確認、理学療法や投薬により痛みを抑える治療を行います。この経過において、痛みが続く場合には、主治医にしっかりと痛みの部位や程度を伝え(SOAPのうちのS、Subjective(主観的情報))、症状の一貫性、連続性を明確に記録してもらうようにします。

神経ブロック治療(ブロック注射は、痛みを感じる部位の神経付近に麻酔薬を注射し、痛みを軽減する治療法です。)では、星状神経節ブロック、後頭神経ブロック注射が有用とされます。薬物療法や理学・物理療法の効用がない場合に行われるのが一般的な方法です。

◆しびれ

しびれは、むち打ちによる神経根の圧迫が原因で発生することがあります。追突などにより首が急激に前後に振られることで頚椎に負担がかかり、神経根が圧迫されることがあります。この神経根の圧迫が、しびれや痛みといった四肢症状を引き起こします。
神経根が圧迫されると、その神経が支配するデルマトームに沿ってしびれや痛みが現れます。デルマトームとは、脊髄神経が支配する皮膚感覚の領域を指します。
支配領域という用語は、特定の神経が影響を及ぼす身体の部位を指します。神経根が圧迫されると、その支配領域に対応する部位に症状が現れます。ムチウチによる神経根の圧迫は、しばしば肩や腕にしびれや痛みを感じさせることがあります。

例えば、

・C3/C4の頚椎の間から出るC4神経根が圧迫された場合
デルマトーム:C4神経根は首の付け根から肩の上部、鎖骨周辺の皮膚感覚を支配します。
症状:首の付け根から肩の上部、鎖骨周辺にしびれや痛みが生じます。また、首を動かすと痛みが増すことがあります。横隔膜の機能が影響を受ける場合もあります。
・C4/C5の頚椎の間から出るC5神経根が圧迫された場合
デルマトーム:C5神経根は肩の上部から外側、上腕外側にかけての感覚を支配します。
症状:肩の上部から外側、上腕外側にかけてのしびれや痛みが現れます。また、上腕二頭筋の筋力低下や反射の低下が見られることがあります。
・C5/C6の頚椎の間から出るC6神経根が圧迫された場合
デルマトーム:C6神経根は上腕外側から前腕の外側(橈側)親指側の感覚を支配します。
症状:上腕外側から前腕の外側(橈側)、親指にかけてのしびれや痛みが現れます。また、手首の背屈(手を反らす動作)や肘の屈曲(肘を曲げる動作)の筋力低下が見られることがあります。

頚部痛・腰痛と同様に、MRI撮影により脊髄や神経根への圧迫の有無を確認、理学療法や投薬により痛みを抑える治療を行います。この経過において、痛みが続く場合には、主治医にしっかりと痛みの部位や程度を伝え(SOAPのうちのS、Subjective(主観的情報))、症状の一貫性、連続性を明確に記録してもらうようにします。

神経ブロック治療(ブロック注射は、痛みを感じる部位の神経付近に麻酔薬を注射し、痛みを軽減する治療法です。)では、硬膜外ブロック、星状神経節ブロックが痺れに対して有用とされます。薬物療法や理学・物理療法の効用がない場合に行われるのが一般的な方法です。

◆めまい・悪心嘔吐

めまい:頭がふらふらする、回転性のめまいを感じることがあります。これにより、日常生活や仕事に支障をきたすことがあります。
悪心:気持ちが悪くなる、吐き気を感じることがあります。特に、頚椎を動かしたり、特定の姿勢を取ったりすると症状が悪化することがあります。
嘔吐:悪心が進行すると嘔吐を引き起こすことがあります。これにより、食欲不振や体重減少が見られることがあります。

交通事故の衝撃で頚椎がズレたり歪んだりすることで、周囲の筋肉が緊張し、血流が悪化します。これが自律神経に影響を与え、めまいや悪心を引き起こす可能性があります。また、頚椎の損傷により、自律神経系が乱れることがあります。自律神経は内臓の機能を調節しているため、その乱れが悪心や嘔吐を引き起こすことがあります。頚椎の損傷が内耳に影響を与える場合、内耳は平衡感覚を司るため、ここに異常が生じるとめまいが発生します。

めまいの検査方法には、重心動揺計検査や電気眼振図(ENG Electronystagmography)などがあります。

・重心動揺検査
重心動揺計は、直立姿勢時の身体の揺れを測定することで、めまいや平衡機能障害の診断に役立つ装置です。めまいは自覚症状ですので、これを他覚的に捉えるために必要となる検査です。

検査方法:靴を脱いで測定台の中心に立ち、両かかととつま先を付けて直立します。姿勢を正してリラックスするように指示されます。
開眼測定と閉眼測定を行い、それぞれ通常は数十秒間身体の揺れを記録します。
測定中は、測定者が被測定者の転倒を防ぐために注意を払います。
重心動揺計は、主に視覚、内耳(三半規管)、体性感覚(脊髄固有反射系)の協調運動を評価し、バランス機能を検査します。この検査は、服を脱ぐ必要がなく、短時間で身体的負担も少ないため、簡便に行うことができます。

・電気眼振図(ENG)
電気眼振図(ENG)は、眼球の動きを記録することで、めまいの程度や障害部位を詳しく調べる検査です。主に内耳(三半規管)の機能を評価します。めまいは自覚症状ですので、重心動揺計と同じく、めまいを他覚的に捉えるために必要となる検査です。

検査方法:目の周りに電極を貼り付け、眼球の動きを記録します。
視標追跡検査、視運動性眼振検査、温度刺激検査などを行います。
温度刺激検査では、耳に冷たい空気を入れてめまいを誘発し、その際の眼球運動を記録します。頭を少し傾けた状態で検査を行うことがあります。
この検査は、主に内耳(三半規管)の機能を評価するために用いられます。脳幹機能の評価も可能ですが、それは他の検査項目の結果も合わせて総合的に判断されます。検査中に不快感を感じることがありますが、検査後すぐに治まります。検査時間は30分〜1時間程度かかることが多いです。

◆耳鳴・難聴

むち打ちによる耳鳴り:機序と症状
むち打ちによる耳鳴りは、むち打ちの衝撃で首が急激に振られることで発生する可能性があります。その主な原因として、以下の2つの機序が考えられます。

内耳への直接的な損傷
強い衝撃により、内耳にある聴覚器官や平衡器官が直接損傷を受けることがあります。
これにより、耳鳴りだけでなく、難聴やめまいなどの症状も併発することがあります。
バレ・リュー症候群
むち打ちにより、首を通る自律神経(特に交感神経)が刺激されたり、損傷を受けたりすることがあります。
これにより、内耳への血流が悪くなったり、内耳の機能が乱れたりして、耳鳴りが発生すると考えられています。
バレ・リュー症候群では、耳鳴りの他に、めまい、頭痛、肩こり、吐き気などの様々な症状が現れることもあります。


具体的な耳鳴りの症状としては、「キーン」「ピー」といった高音や「ジー」「ザー」といった低音その他、様々な音がして、持続時間もすぐに消える場合や断続的な場合、常に聴こえる場合とさまざまです。静かな場所では特に気になり、ストレスや疲労で悪化しやすい特徴があります。

また、むち打ちによる耳鳴りは、事故直後に現れることもあれば、数日後、あるいは数週間後に遅れて現れることもあります。
耳鳴りの治療には、薬物療法、音響療法、心理療法などがあります。


・耳鳴の検査方法

ピッチマッチ検査、ラウドネス検査

ピッチマッチ検査とラウドネス検査は、耳鳴り(耳の中で感じる音)の評価において重要な役割を果たす検査です。以下にそれぞれの検査について詳しく説明します。
・ピッチマッチ検査
ピッチマッチ検査は、耳鳴りの音の高さ(周波数)を特定するための検査です。この検査では、患者が感じている耳鳴りの音に最も近い周波数を特定します。
検査方法
音の提示: 検査機器(オージオメーター)を使用して、患者に様々な周波数の音を提示します。
比較と選択: 患者は提示された音の中から、自分の耳鳴りの音に最も近いと感じる音を選びます。
周波数の特定: 選ばれた音の周波数が、患者の耳鳴りのピッチ(音の高さ)として特定されます。
この検査は、耳鳴りの音の特性を理解するための第一歩であり、後続の治療や評価に役立ちます。
・ラウドネス検査
ラウドネス検査は、耳鳴りの音の大きさ(音圧レベル)を評価するための検査です。ピッチマッチ検査で特定された周波数の音を使用して、耳鳴りの音の感覚的な大きさを測定します。
検査方法
音の提示: ピッチマッチ検査で特定された周波数の音を、異なる音圧レベル(デシベル)で患者に提示します。
比較と評価: 患者は提示された音の中から、自分の耳鳴りの音の大きさに最も近いと感じる音圧レベルを選びます。
音圧レベルの特定: 選ばれた音圧レベルが、患者の耳鳴りのラウドネス(音の大きさ)として特定されます。
この検査により、耳鳴りの音の強さを客観的に評価することができ、治療の効果を測定する際にも使用されます

・難聴の検査方法

聴力検査(オージオグラム)

純音聴力検査は、様々な周波数の音を聞かせて、どの程度の大きさの音まで聞こえるかを調べる検査です。ヘッドホンを装着して行う「気導聴力検査」と、振動装置を耳の後ろの骨に当てて行う「骨導聴力検査」の2種類があります。

気導聴力検査では、外耳から内耳までの聴覚経路全体の機能を評価します。一方、骨導聴力検査は、内耳から脳までの聴覚神経の機能を直接評価します。これらの検査結果を組み合わせることで、難聴の種類や程度、原因部位を特定することができます。

検査では、低い音から高い音まで様々な周波数の音を段階的に聞かせ、聞こえた時点でボタンを押すように指示されます。それぞれの周波数で聞こえる最小の音の大きさを測定し、聴力レベル(dB)として記録します。聴力レベルが低いほど、小さな音まで聞こえることを意味します。

3.むち打ちの後遺障害認定

むち打ちの後遺障害等級

後遺障害等級とは、むち打ちなどの交通事故によって後に残ってしまった怪我の後遺症が、労働能力の喪失や低下にどの程度影響を及ぼしているかを、国の基準に基づいて評価する制度です。この認定を受けることで、適切な後遺障害慰謝料や逸失利益を受け取ることが可能になります。

むち打ちの症状で後遺障害等級の認定を受ける可能性のある等級は、下記の12級13号や14級9号が一般的です。なお、等級は第1級を最上位とします。

むち打ちで後遺障害等級を獲得する意味

むち打ちの怪我を負うことで通院をしたり、仕事を休んだりしたことで、傷害慰謝料と休業損害の請求ができますが、これに加えて後遺障害等級が認定されることにより、後遺障害慰謝料や逸失利益の請求をすることができるようになります(下図での2と4)。

つまり、むち打ちにより12級13号や14級9号の後遺障害等級認定を受けることによって、後遺障害慰謝料を、傷害慰謝料とは別に、合わせて請求できるようになるわけです。

また、同じくむち打ちにより12級13号や14級9号の後遺障害等級認定を受けることによって、将来的に仕事をする力が落ちてしまう(労働能力喪失)ため、この喪失した労働能力に対する補償として逸失利益が請求できます。後遺障害等級認定を受けることによって、この逸失利益を、むち打ちでの症状のため通院等で仕事を休んだことによる休業損害とは別に合わせて請求できるようになります。

そして、これら後遺障害慰謝料や逸失利益は弁護士が賠償請求の際に用いる弁護士基準での算定により賠償額を大きく増額しやすい費目です。この二つの費目を請求できるようになることから、後遺障害等級の認定を受けることが賠償金請求の実務ではとても重要なことになります。後遺障害等級を認定されなかった場合(非該当判断)は、後遺障害慰謝料や逸失利益の請求はできません。傷害慰謝料と休業損害の請求のみにとどまります。

弁護士基準とは交通事故での損害賠償額を算定する上で、自賠責基準や任意保険基準と比べて最も賠償金額が高くなる基準で、弁護士が賠償交渉を代理する場合に用いることができるものです。

示談金と慰謝料って違うの? 弁護士基準って何? 知らないと損をする賠償金額のポイント

(図表)休業損害、傷害慰謝料、逸失利益と後遺障害慰謝料の位置付け

12級13号と14級9号の認定基準の違い

むち打ちの症状で後遺障害等級の認定を受ける場合、下記の12級13号や14級9号に認定されることが一般的であることをお伝えしておりますが、両者の違いはどのようなところにあるのでしょう。

まず、後遺障害表での表記を見てみましょう。

12級13号局部に頑固な神経症状を残すもの
14級9号局部に神経症状を残すもの
後遺障害表での表記

後遺障害表での両者の違いは、文言上「頑固な」があるかどうかだけで、これだけでは区別するのは難しそうです。

そこで、この違いを実務上の扱いを踏まえて説明をしますと、

12級13号 症状が神経学的検査結果や画像所見などの他覚的所見により、医学的に証明できるものであること
14級9号 受傷時の状態、治療の経過等から症状の連続性や一貫性が認められ、事故を原因とする症状であると医学的に説明可能であり、単なる故意の誇張ではないと医学的に推定されるものであること
実務上での取り扱い

と区別され、この説明が両者の違いを具体的に表す基準となります。

◆12級13号と14級9号のそれぞれの等級認定表の具体例

つまり、両者の大きな違いは、他覚的所見の有無です。では、他覚的所見とは何でしょうか。

他覚的所見とは

他覚的所見とは、医師が診察や検査を通じて客観的に確認できる身体の異常や変化のことで第三者が確認できる客観的な証拠のことを指します。これには、レントゲンやCT,MRIなどの画像診断、筋電図やSEP(体性感覚誘発電位)、MEP(運動誘発電位)などの神経学的検査、徒手筋力テスト(MMT)や可動域(ROM)測定などの理学的検査の結果が含まれます。

◆画像診断

MRI: MRI検査で椎間板ヘルニアや脊髄・神経根への圧迫が確認されることがあります。例えば、C5-C6の椎間板ヘルニアが神経根や脊髄を圧迫していることがMRIで確認できれば責任部位を観察でき、有意な他覚的所見となります。

CTスキャン: 骨の異常や椎間板の変性が確認できる場合に他覚的所見として役立ちます。

◆神経学的検査

筋電図検査: 筋電図検査で神経の伝導速度や筋肉の反応に異常が確認されれば、これは有意な他覚的所見となります。

深部腱反射検査: 深部腱反射が異常であれば、神経障害の証拠として他覚的所見に該当しえます。

SEP検査(体性感覚誘発電位検査)
概要:
目的: 末梢神経から脳までの感覚神経伝導路を評価します。特に感覚入力の伝達経路に焦点を当てています。
方法: 末梢神経に電気刺激を与え、その刺激が脳に到達するまでの電位変化を記録します。これにより、感覚伝導経路の機能を評価します

MEP検査(運動誘発電位検査)
概要:
目的: 大脳から脊髄を通じて筋肉への運動神経伝導路を評価します。特に中枢神経系の運動路に焦点を当てています。
方法: 磁気刺激や電気刺激を用いて脳の運動野を刺激し、筋肉の反応を記録します。これにより、脳から筋肉までの神経伝達経路の機能を評価します

◆理学的検査

徒手筋力検査(MMT): 筋力低下が確認されれば、神経障害の証拠として他覚的所見となりえます。むち打ち症の場合、頚椎や腰椎の可動域(ROM)の測定は評価されません。

他覚的所見まとめ

画像所見、神経学的検査所見、理学的検査所見といった他覚的所見が存在する場合、症状や症状の原因の存在を客観的に確認することができるため、症状を医学的に証明でき12級13号に認定される可能性が高まります。

一方で、他覚的所見がない場合、実務上のむち打ち症状の多くの事例は他覚的所見がないことが多いのですが、この場合に14級9号に認定されるか非該当判断となってしまうかの分水嶺は、「症状の連続性や一貫性が認められ、事故を原因とする症状であると医学的に説明可能かどうか」です。そのため、症状の連続性や一貫性をしっかり記録から主張できるように事故当初から計画的に準備をしていくことが重要になります。

12級13号と14級9号の後遺障害慰謝料・逸失利益の賠償額の違い

12級13号と14級9号に認定された場合の後遺障害慰謝料と逸失利益の金額は(賠償金計算方法のうち、最も高くなる弁護士基準での金額)、

後遺障害等級後遺障害慰謝料(弁護士基準)逸失利益(弁護士基準)
12級13号290万円14% 10年間喪失(むち打ちの場合10年喪失とするのが実務での一般的扱い)
14級  9号110万円 5%   5年間喪失(むち打ちの場合5年喪失とするのが実務での一般的扱い)
12級13号と14級9号の後遺障害慰謝料、逸失利益の比較

逸失利益の原則的な計算方法は、

事故前年度の年収✖️労働能力喪失率✖️労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数です。

例えば、事故前年度年収500万円の方で逸失利益を計算しますと、

・12級13号を獲得した場合の逸失利益は

 5,000,000✖️0.14✖️8.530=5,971,000円

・14級9号を獲得した場合の逸失利益は

 5,000,000✖️0.05✖️4.580=1,145,000円

・非該当認定の場合、逸失利益は0円

となります。

そこで、12級13号又は14級9号を獲得した場合の後遺障害慰謝料と逸失利益を合計しますと(前年度年収500万円、過失割合0%とします。)、

・12級13号を獲得した場合の後遺障害慰謝料と逸失利益の合計額

 2,900,000円+5,971,000円=8,871,000円

・14級9号を獲得した場合の後遺障害慰謝料と逸失利益の合計額

 1,100,000円+1,145,000円=2,245,000円

・非該当認定の場合、後遺障害慰謝料と逸失利益の合計額

             0円+0円=0円

むち打ち症でも後遺障害等級を獲得することの賠償上の重要性をお分かりいただけるかと思います。

4. 後遺障害認定を勝ち取るための3つのポイント

むち打ちについて、その症状や類型、後遺障害への認定のされ方、賠償額への影響など様々な角度でご説明をしてきました。

それらを踏まえて、むち打ちによる症状について後遺障害等級認定を勝ち取るための3つのポイントをご説明いたします。

ポイント1:早期の弁護士相談と証拠収集

ポイント2:適切な治療と通院記録

ポイント3:後遺障害診断書の精度を高める

ポイント1:早期の弁護士相談と証拠収集

事故に強い弁護士へ早期相談を行う意味

事故直後のサポートは非常に重要です。交通事故に遭遇した際、初期段階で弁護士に相談することには二つの大きな利点があります。

交通事故に不意に巻き込まれた場合、保険会社からさまざまな書類を提出するよう求められたり、警察による事故の種類(人身事故または物損事故)の判断を求められたりと、どのように対応すべきか迷うことがあるでしょう。このような状況に対して、事故に強い弁護士からのアドバイスを得ることができます。

例えば、事故直後の段階で手足の痺れが生じているような場合には、MRIの撮影を主治医にお願いし、MRIのある大きな病院への紹介状(診療情報提供書)を作成いただくところからアドバイスを始めます。事故から時間が経つにつれて事故以外の原因が混入する、混入したとの相手方保険会社の反論の余地が高まりますので、適時のアドバイスと実行が必要となります。

事故直後の状況記録

事故直後は、ご自身が思っている以上に、混乱し、記憶が曖昧になってしまうものです。

 後遺障害の認定を受けるためには、事故の状況を正確に伝えることが重要になります。 そのためにも、可能な限り事故直後の状況を記録しておくようにしましょう。

 ドライブレコーダーがあることが望ましいですが、事故直後の現場の様子は実況見分でも再現できないことも含まれます。様々な角度から事故現場や車体の損傷程度、各当事者(車両)の位置関係などをスマホなどで取っておくと良いでしょう。

これら画像が、後日の後遺障害認定手続きに際し弁護士が事故態様の主張をする場合、外力の入力位置と症状部位、程度との整合性を主張する場合に役立ちます。また、過失割合の争いが生じた場合にも有力な証拠となることがあります。警察による実況見分よりも早く画像を収集できる機会はこの場面しかありません。

・実況見分調書の作成

警察に診断書をできるだけ早く提出し、実況見分を行ってもらうことが必要です。物損事故だと実況見分は行われません。負傷した場合は後日の争いに備え人身事故として届出を行い、警察による実況見分を早期に済ましておきましょう。

ポイント2:適切な治療と通院記録

むち打ち症は、適切な治療を受け続けることで症状の改善が見込めるだけでなく、後遺障害認定を受ける上でも非常に重要となります。

項目内容
適切な治療専門医の診断に基づいた治療計画を立て、指示に従って治療を受けることが大切です。接骨院への通院も医師の方針を念のために確認いただく必要がありますが通院の有用性は認められます。
定期的な通院自己判断で通院を中断せず、医師の指示に従って定期的に通院し、継続的に治療を受けるようにしましょう。
症状の記録痛みやしびれの程度、可動域の制限など、具体的な症状を記録しておきましょう。痛いところ、痺れる場所などは伝えないと記録されることはありません。

後遺障害認定の審査では、治療の経過や症状の推移が重要な判断材料となります。医師の指示に従わず治療を中断したり、通院が途絶えたりすると、症状の改善が見られない、あるいは症状が治癒したと判断される可能性があります。

日常生活で不便を感じていることや、症状によって仕事や家事に支障が出ている場合なども、医師に伝えるようにしましょう。

専門医の診断と治療方針

医療機関で現在治療を進めておられる方は、治療や通院の往復などにも多大な時間を要します。それに加えて保険会社への対応も行うとなると、被害者の方の日常生活への影響も大きいことでしょう。 

また、通っている医療機関の治療方針について意見が合わないなどのお悩みをお持ちの方もいらっしゃると思います。

 このようなお悩みをお持ちの方は、交通事故に詳しい弁護士にご依頼されることで、弁護士が転院についてのご相談や保険会社との交渉、休業損害に関する書類の整備など賠償に必要な手続きをご本人に代わって行います。これにより被害者の方の負担は大きく軽減され、治療に専念いただくことができます。また必要に応じて、医学知識に通じた弁護士が被害者の方の治療等に同行いたします。

定期的な通院及び症状の主張と記録

◆定期的な通院

むち打ちの症状は、事故直後には軽微であっても、後から強く現れることがあります。 そのため、後遺障害認定を受けるためには、 定期的な通院と症状の記録が重要 です。

治療は、医師の指示に従い、自己判断で中断しないようにしましょう。症状がなくなったために通院をやめたと判断されてしまう危険性があります。

 通院の頻度は症状の程度によって異なりますが、できる限り 週に1~2回 は通院し、治療を受けることが望ましいです。これは、後遺障害等級認定の基本的説明でお伝えした、14級9号の認定基準である、「受傷時の状態、治療の経過等から症状の連続性や一貫性が認められ、事故を原因とする症状であると医学的に説明可能であり、単なる故意の誇張ではないと医学的に推定されるものであること」にある通り、治療の経過や症状の連続性・一貫性を説明しやすくすることにもなります。

◆接骨院への通院

交通事故による負傷に対しては、今回特集するむち打ち症状む含み、整形外科に通院して医師の治療を受けることが原則です。

ただ、病院は開いている時間や待ち時間の問題で通院できずに困っておられる方や、フランクにお話ししやすい、痛みの悩みを打ち明けやすいところに行きたいという希望をお持ちの方もよくいらっしゃいます。そこで、遅くまで開いていることが多く、施術の間ずっとそばで治療してくれることもあって気軽にお話をしやすい接骨院への通院も有用です。

賠償実務の点で理想的な接骨院は、❶施術内容を否認されることのないように、施術内容を詳細に施術証明書に記載し、治療の必要性や有効性について正確に伝えることができる接骨院であること。❷医師との良好な関係を長く維持されている実績があり、後遺障害等級認定の際に必要な医師による後遺障害診断書の作成をスムーズに行うことができる接骨院であることが望ましいといえます。

接骨院での施術内容、賠償手続きでの有用性については、こちらで詳しく解説しております。

むち打ち治療、接骨院選びのポイント!賠償金・後遺障害を見据えた通院のススメ

◆症状の主張と記録

通院のたびに、以下の点を主治医にお伝えできると良いです。病院での診療のうち、投薬内容や診断内容、理学療法の履歴は経過診断書や診療報酬明細書に当然記録されますが、いわゆるSOAPのうちのS、Subjective(主観的情報)については、患者が訴えないと記録されませんので、しっかりと具体的に症状を伝えてください。

また、症状を具体的にしっかりと医師に伝えることで、投薬や理学療法などの治療内容も治癒に向けて適した内容に変化します。それでも治らずに後遺症が残ってしまったのであれば、より治療の経過や症状の連続性・一貫性を主張しやすくなります。

ここで、主観的情報としてお伝えしていただきたい内容としては、頭痛、めまい、吐き気、しびれなど、具体的な症状とその部位、程度、また、仕事や家事への影響など、日常生活で困っていることがあればこの点についても具体的に伝えてください。日常生活や仕事上で困っていることについては、後遺障害等級認定手続きにて申請時に別途書面を作成して提出することもできます。この書類と治療経過での診断書に一貫した記述があれば、症状の連続性や一貫性が認められる有力な証拠となり得ます。

ポイント3:後遺障害診断書の精度を高める

後遺障害認定手続きは書面審査です(例外として、醜状障害については醜状障害の確認のための面接があります)。そのため、医師の作成する後遺障害診断書が後遺障害等級認定を受けるために最も重要な書類となります。

この書類の内容が不十分であったり曖昧な表現が多いと、適正な等級認定を受けられない可能性があります。以下に、後遺障害診断書の精度を高めるための具体的なポイントを詳述します。

弁護士と医師の連携

後遺障害診断書は、後遺障害認定の可否を左右する重要な書類です。 しかし、医師は法律の専門家ではありません。

そこで、事故に強い弁護士は、医師と連携を取りながら、医学的な知見に基づいた具体的な症状の記述と、それを裏付ける医学的根拠を明確にすることで、説得力のある後遺障害診断書の作成をサポートします。また、必要があれば、追加の検査や診断書の内容に関する意見書の作成を医師に依頼することもあります。

具体的で詳細な症状の記述

後遺障害診断書には、症状を具体的かつ詳細に記述することが求められます。一般的な表現ではなく、具体的な状況や症状を明確に伝えることが重要です。

不十分な記述:「めまいがする」

具体的な記述:「頭を動かすと、吐き気を伴うめまいがする」

症状の発生条件や具体的な感覚を詳細に記述することで、書面審査の特性上、実際の症状をより正確に調査機関に伝えることができ、残存する症状に対する正確な調査を期待できるようになります。

日常生活における支障の具体例

日常生活での支障についても、具体的な例を挙げることが重要です。単に「仕事に集中できない」と記述するのではなく、どのような状況でどの程度の支障があるのかを明確にする必要があります。

不十分な記述:「仕事に集中できない」

具体的な記述:「めまいと頭痛のため、1時間に1回は休憩が必要」

このように具体的な状況を記述することで、日常生活への影響がより明確に伝わります。

場合によっては、弁護士が勤務先に伺い、被害者の仕事現場の状況、仕事内容などを確認して報告書を出すことも行います。

医学的根拠に基づいた内容

後遺障害診断書には、医学的根拠に基づいた内容を記載することが求められます。画像検査結果や神経学的所見など、他覚的所見である客観的なデータを含めることで、症状の信憑性が高まります。

画像検査結果:MRIやCTの画像を添付し、異常所見を具体的に記述する。

神経学的所見:反射検査や筋電図検査の結果を詳細に記載する。

これにより、診断書が単なる主観的な報告ではなく、客観的な医学的データに基づいたものであることが証明されます。

これら他覚的所見を後遺障害診断書に医師に記載してもらうだけではなく、画像所見の補足を意見書として別途作成してもらい、後遺障害診断書を補強する証拠として添付して提出することもあります。

5. 後遺障害認定が認定されない場合の対処法

むち打ちによる症状が残って後遺障害認定手続きを行なったものの、残念ながら後遺障害認定がなされず非該当とされるケースはあります。 そのような場合、以下の3つの手段を検討しましょう。

手段説明
異議申立て認定された後遺障害等級(非該当を含む。)に不満がある場合、自賠責に対し等級認定結果が不当であるとして異議申立てを行うことができます。新たな証拠を提出し、あるいは新たな主張を行うことで前回の認定の不当な認定部分を攻撃し、説得力のある異議申立てを行います。この異議申立てに回数制限はありません。
紛争処理機構申立て一般社団法人自賠責保険・共済紛争処理機構(「公益財団法人交通事故紛争処理センター(通称:紛セン)とは全く異なる組織です。)へ自賠責調査事務所の後遺障害等級認定の不当さを主張し、適切な後遺障害等級認定を求めて申請することができます。後遺障害の有無(他に因果関係の有無、過失の有無など)について、自賠責調査事務所の認定結果に誤りがあるため、適正な後遺障害等級認定を求める旨の調停を申請することができ、紛争処理機構の調停結果について保険会社は遵守することが求められています。なお、申請に際して費用はかかりません。
訴訟異議申立てや紛争処理機構でも覆らなかった場合、裁判所に判断を仰ぐ方法があります。自賠責と異なり、裁判官が様々な証拠をもとに心証を形成し判断を下します。医学や工学など合理的な根拠に基づいた主張を行うことが重要になります。

6.まとめ:むち打ちに強い弁護士がむち打ち症の賠償金を最大化します

むち打ち症による後遺障害は、目に見えにくく、その苦痛を理解してもらうことが難しいケースも少なくありません。適切な後遺障害認定を受け、正当な補償を受けるためには、事故に強い弁護士のサポートを受けることが近道となります。

当事務所では、多くのむち打ち案件に対応しており、それぞれの案件のポイントをしっかりと把握し、個別の対応を行うことで適切な解決を実現しています。

納得のいく賠償額や後遺障害認定を得るために、専門的なサポートを提供していますので、まずは無料相談にお越しいただき納得のいく相談内容を確かめてください。